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デザイン組織のつくりかたを読んだ

きょうは デザイン組織のつくりかた という本を読みました。

デザイン組織のつくりかた デザイン思考を駆動させるインハウスチームの構築&運用ガイド

デザイン組織のつくりかた デザイン思考を駆動させるインハウスチームの構築&運用ガイド

  • 作者: ピーター・メルホルツ,クリスティン・スキナー,長谷川敦士,安藤貴子
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2017/12/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本を読むきっかけは、とある記事の一文でした。

どうしてデザインが大切なのか、ここ最近デザインが盛り上がっている歴史的背景を一通り話して、「あーやっぱりデザインって大事だね!」って思ってもらうまでにまずひと苦労。 (中略)だんだんめんどくさくなってきたんですよね… もうめんどくさいから、そういう説明するのはやめることにしました。この本に委ねます。

「デザイン組織のつくりかた」がめっちゃ良かったので、100冊ぐらい配ってみようかと思う | TECHNICAL CREATOR

昨今の「デザイン大事だよね」という流れの歴史的経緯を学んでいきたいというモチベーションで購入し、しばらく積読となっていました。

一通り読んでみて、いくつか学びになったところを備忘録として残しておきたいと思います。デザイン組織の構築の部分より前の、デザイン組織が必要になってきた経緯が中心です。自分なりの言い回しでメモしているため、原著との解釈が異なる部分があります。

コンシューマライゼーションの波

何十年ものあいだソフトウェアは MicrosoftOracleAdobe といった会社が作る製品だったのが、インターネットの急速な普及によって、大きく変化してきた。業種に関わらず、業務の中心にソフトウェアが存在し、インフラとなり、程度の差はあってもすべての会社はソフトウェア会社になりつつある。

ソフトウェアは性質上抽象的なものであり、ほとんどの人にとってその抽象性を理解することは容易くない。そのため、ソフトウェアの分野では「ヒューマン・コンピュータ・インタラクション」「インタラクションデザイン」「インターフェースデザイン」「ユーザビリティ」といったデザインに対して、相対的に多くの投資が行われている。

単純に作られているソフトウェアの数が増えているだけでなく、高いレベルの性能を要求される。「高いレベル」という曖昧な表現だが、ただ要求にこたえられる「すべての機能の全部盛り」ではもはや不十分である。ソフトウェアの分野はそれくらいに成熟したフェーズにあり、他社と横並びに機能するサービスを提供すれば戦略的にまずまずだった時代は終わり、体験価値の点でも競争していく段階に来た。業務や作業に使うソフトウェアの数が増えていくにつれ、ユーザーの知識も高度化し、効率的に機能するソフトウェアは評価されても、そうでないものはそもそも見向きもされなった。

そういう傾向は長い間、消費者向け(toC)の製品に限られたものだった。というのは、何を買う・使うかは個人がそれぞれに選ぶ立場にあったからだ。一方でエンタープライズ系のソフトウェアはデザインがずっとひどいものだった。というのにもいくつか理由がある。

  • 購入者が必ずしもユーザーではなかった
  • ユーザーに選択肢がなかった
  • デザインのひどさはトレーニングによって克服できると信じられていた
  • 仕事は面白くて楽しいものであってはならないからソフトウェアにもその堅苦しさを反映すべきという空気

しかし、今のエンタプライズ系ソフトウェア市場は進化しており、企業は”ひどいデザイン”のソフトウェアを使うことで生産性の足を引っ張ると悟った。エンタープライズ系ソフトウェア会社は、デザインがお粗末だと顧客を失いかねないことに気づいた。高度な知識を持つようになったユーザーは”ひどいデザイン”を我慢することを嫌うようになった。

そして、子供の頃からデジタルテクノロジーに浸かってきたミレニアル世代が社会人になってきてから、ITのコンシューマライゼーションが加速している。

Everything-as-a-Service

これまでソフトウェアは、プロダクト、つまり製品だと考えられてきた。完成すると、箱に入れてパッケージ化され販売されるか機械に直接インストールされる。しかし、常時ネットワークに接続されるようになってからの世界では、ソフトウェアが完成することはなく、より最適化され、より強化され、デプロイされ続ける

そうした変化から、今では顧客がソフトウェアそのものを手に入れることはなくなり、そのライセンスへのアクセス権を購入するサブスクリプションモデルによって収益を生み出すのが当たり前になってきた。修正され続けるソフトウェアの性質が、売り手と買い手の関係性を変えた。両者の関係が継続的なものになってから、すべての会社はソフトウェア会社であるのと同時にサービス会社になりつつある。

まだ、サービス会社になることができていないソフトウェア会社は、顧客をどう捉えて、どうやり取りするかを根本的に再考する必要さえある。今は、製品を使うために顧客はアカウントを発行し、その行動は細かく追跡されている。企業には、顧客のことをよく知り、ソフトウェアを修正し、サービスを提供し続ける責任がある。

ユーザーエンパワーメントという諸刃の剣

ただ「サービスを提供する」会社を目指せばいいわけでもない。これまでになく現状は複雑化している。1990年代半ばまでは、企業に連絡するツールは電話や FAX、または郵送を使って直接働きかけた。その後、Web や E-mail が登場し、やがてオンラインチャットやソーシャルメディア、モバイルアプリが加わり、デジタル上での顧客とのタッチポイントが爆発的に増えた。

インターネットにつながったソフトウェアはコミュニケーションだけにとどまらない。インターネットが普及する以前は、銀行であれば、ソフトウェアは主に訓練された専門の銀行員によって使用される社内ツールだった。顧客が直接アクセスできるのは ATM やテレフォンバンキングくらいで、それらでできることは基本的なものに限られていた。デスクトップから Web へのアクセスが可能になると、銀行はかつて社内システムとして公開していた機能を顧客に提供するようになった。

こうした複雑なシステムを顧客は喜んで利用した。自分で直接管理できることを高く評価した。一方の銀行も人件費の削減に役立つため、それを促進した。

だが、社内の訓練された専門の銀行員(ユーザー)は一日に何時間もそうしたツールを利用するのに対して、一般のユーザーの場合は一週間、あるいは数ヶ月の数分のために利用する可能性が高い。専門家以外の比較的使用頻度の低いユーザーに分かりやすいものを作るには、根本からじっくりと考え直す必要が出てくる。

そして、競合するソフトウェアと機能が横並びである以上、ユーザーエクスペリエンス(UX)も顧客がサービスを選ぶ際の理由になる

複雑さと単純さという正反対の性質を抱えないといけない矛盾は、携帯電話の登場でますます深刻化した。アクセスポイントを一つ増やすと、その分だけ複雑さは増す。だが、モバイルデバイスには画面の小ささや処理能力の低さなどの制約がある。その範囲内でデザインするにはさらなる合理化と単純化が必要になる

デザインのポテンシャル

ソフトウェアによってビジネスはより一層複雑さを増した。それに対処するために、企業はデザインに投資する。一方で、デザインを企業に導入する責任を負うほとんどの人はデザインが持つ力について初歩的な理解しかない。デザインを主に美的価値を高め、スタイルや外見をよくするものだと認識している。

ジョブズの有名な言葉に以下のものがある。

ほとんどの人はデザインを見た目のことだと思っているが、それは間違いだ。デザインをうわべだけのことだと勘違いしている。デザイナーには箱を渡して、「見た目をよくしてくれ!」と言えばいいのだと。私たちは、デザインとはそういうものではないと考える。どのように見えるか、どのように感じるかではない。デザインはどのように機能するかなのだ。

プロダクトデザインのコンサル会社 Ammunition の設立者のロバート氏は、「デザインはプロセスだ。イベントではない。」と語り、最近までデザインは一つの流れの中での一つのステップだとみなされてきたという。

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彼は、図.1 のようにデザインは単独で存在しうるものではなく、図.2 のように製品開発のライフサイクル全体に取り入れてこそ、最大の効果が発揮されるプロセスであると主張している。

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すべてのデザインはサービスデザイン

「サービスデザイン」という新しい領域は、企業によるデザインの活用方法をリフレーミングする。これまでのデザインは作ることに焦点を当てるよう求められてきた。サービスデザインも本質は変わらないものの、視点はもっと高く、広いものであり、作られた成果物自体を重視するより、ステークホルダーとそれらと関わるすべての活動の関係性を理解しようとする

作られた成果物は独立した存在ではなく、より大きなサービス・エコシステムのなかの一つのツールに過ぎないと考える。

さいごに

この記事は、本書籍の導入部のみの備忘録です。この後、書籍では「組織に広く貢献するデザインの力」へと解説が続きます。私が所属する会社もエンタープライズ系のソフトウェア会社の一つで、実際にデザイングループが存在し、日々製品/サービスの顧客体験を考え、提供し続けています。そういった背景があり、本書を読むことで組織の中でのデザイングループの位置付けや重要性を改めて学ぶことができたように思いますし、ITエンジニアの立場からも積極的にデザインに関わっていきたいと感じています。

以上です。